永久運動

日記のような、随筆のような、ただ思ったことをつらつらと書きつらねるところです

責務てきな

 秋風というんか名も知れぬ風を感じながら夕方を歩いて見つけたのは、これもまた名も無き雑居ビルなんやけども、ありえないはずの既視感がわきあがってきて立ち止まってじっくり眺めてしまっている短い時間のあいだ、その秋風は髪を揺らす。はじめてみるはずのその建物から湧き上がるこの感覚ははたしてなんなのか、その正体は結局わからずに歩いて通り過ぎたのは昨日のことで、まあなんだかんだこの町この地域での生活に慣れはじめてきたのかなあと思ったりして、吸っていたセブンスターを地面でもみけす。

 

 メンター制度という、年齢のちかしい人が自分の担当についてくれて、新入社員が感じるであろう不安や悩みや疑問などをきいてくれたりして、慣れない業務を円滑に進めるというシステムがあるんやけども、その飲み会がちょうど一昨日ほどにあって、あまり気が進まないなか参加してきた。4人ほどの人数でイタリア食堂ならぬそういうテイストの居酒屋に行き、皿に対して少なすぎるおつまみのようなものをつつきながら、ワインぐらすに入れられた生ビールを飲んで、かんじとるこの絶妙に仲良くないこの空気。「どう?慣れた?」みたいな安直すぎる質問に、あ、はいみたいな返事がかえされ、声にならないへえ~、そして沈黙がやってくる。この空気!あかん!と変な正義感というのかなんなのか、関西人としての責務みたいなものを感じてしまって、しゃべりたおしてきてしもうて、笑いの旋風がまきおこり、そのおかげか、次の飲み会も予定されてしまうという始末になって、またこの役をせなあかんのかという、後悔というか変なめんどくさい感にとらわれてしまった。

 

 そもそもはべらべら喋るような性格ではないし、まあ人と会うのは好きやけど、それもなんか変な楽しみかたをしてると自分でも思うんやけれども、やっぱり場の雰囲気を読んでしまって、楽しいほうへと自らを犠牲にしてもっていってしまうのはあとから謎の疲労感をかんじてしまうのであって。素の自分をさらけだすのにはひとりでいるのが一番よくて、でも誰かと一緒にいたくて、というパラドックスをかかえながら、またセブンスターに火をつける25歳。